ぐらでーしょん
匿名的だけどとても良い一日だった。昨日の気力であれば今日の現実はなかっただろうな。精神のタイミングで現実が変わるとは、なんとも儚い世界。
オリーブオイル1リットルを買い足した。サラダ油としても併用しているとしても、男の一人暮らしで使い切るのは大変、なんてことはない。このサイズでなければ使い勝手が悪い。久々に玉ねぎのオリーブオイル漬けを副菜にしようと思ったのだけど、サラダを買うのを忘れていたため、玉ねぎはサラダにスライドした。スライスして水にさらして塩もみして。オリーブオイルはキノコのマリネにスライド、塩とお酢とポッカレモン、はなくなっていたからまた買わねば。七味唐辛子をちょっとまぶして辛味を追加。
メインは好きな葉物ベスト3に入ってくる空心菜があったから豚肉の切り落としと炒めて醤油で味付け。本当はナッツと炒めてナンプラーでアジアンなのが好きなのだけど、これだとたんぱく質がないし。ナンプラーはまだ臭い。食材の臭さは慣れ。納豆も美味しいけど、汗かいて乾いたときの匂いだし。
買ってきたご飯を一気に読んだ。この効用なのかなんなのかは分からないけど、副交感神経が活発になっていてうとうとしてしてしまう。起きた時、ここはどこだろうと思う。が、現実はシビアで、20時までに取りにいかないといけないクリーニングがあるのに時計をみれば19時50分。急いで外に出たら雨が降っていたけど、おかまいなく走った。回収してお店の外に出た瞬間雨脚が強まる。でも、ビニールで覆われているし、僕も財布しか持っていないからゆっくり歩いて帰る。なんだか楽しい。
そうして時間は遡る。
今朝目覚めた自分はどうやら、食欲に徹することを決心していたらしい。何が決めたのかは分からない。少なくとも外的作用はない。物理的空腹は平日の弁当に詰めたあまりの冷凍ご飯を解凍して卵かけご飯にした。「わるいごはん」。
決心はしている癖にどうしようかなと表面上はそわそわしているのを横目に、シャワーを浴びて身繕いして14時前に出発。本を買いに行く電車に乗っている時間の為の本を見繕う。本当は中上健次が良かったけど見あたらなくて、竹内ゆゆこさんの砕け散るところを、、にしようと手に取ったのだけど、この本を教えてくれた人にはもう影響を受けたくないなと思い返し、やたらと目に入って来る辻村美月さんの中で「サクラ咲く」に決める。
あらすじを見なくても大丈夫認定の数少ない作家さん。たまたま登場人物の中に僕の本名の下の名前と同じ人がいてふふんってなった。ただし、読み仮名が付いていないから、何と読むかは分からない。特に匿名性にする必要もないから書いてもいいか。僕の本名は○○悠です。
目的地には30分程度電車に乗っていたらついてしまう。これって、電車という移動手段がない人からすれば空間を瞬時に移動したと認識されるだろうなと思う。小説がタイムスリップの話だったからそんなことを思ったのかもしれない。自分が意志で体を動かさなくても勝手に場所が移動される。
そのまま会場に向かえば良かったのだろうけど、ちょっと一服して落ち着こうと思ったのが迷子の始まり。汗だくになりながらさんざん歩き回ったのに喫煙スペースはなかった。ただ、好きそうな朽ちた階段があって収穫がないなんてこともなく。朽ちた階段の途中に入り口があるマンションとかまさに生活感。
結局、文学フリマが開催しているビルの中に吸えるところがあった。近くになるにつれ、出展者のシールを貼った人が目につくようになる。巫女さん、じゃないな、なんていうのだっけ。着物でも浴衣でもなく、和装? この衣装京都の時にも見かけたなと。同じ人かは知らないけど、なんだかんだ記録には残っているものである。喫煙スペースでは、誰が1位とかなんとか話している人が居て、そういうランキング付けもやっているのかと観測する。
そうして、やっと会場入りかとなる前に、まだ障壁があった。なにやら某感染予防のためのアプリをインストールしないといけないらしい。めんどくさ。この精神を読み取ったのか僕のスマホは一向に100%になってくれない。一回外に出るハメになった。そうこうしているうちに雨も降りだす。
やっとこさ会場入りして、歩いていたら視界の端に目的地というか目的の人が見えたのだけど、一旦様子見しているうちに先客が現れたので窓から川と雨を見ながら待っていた。何周かもしてみて求心力がありそうな本はいくつかちらっと視界に入って来たけど、それくらいの力ではここでは足りない。僕は目的が決まっているときはついでに買うとかできない人。ついでではない問答無用の存在感が要る。
先客の長々とした営業が終わってお疲れのところに突撃した。伸びをしているところが見られたのは眼福(こら)。しかし、何回が直に接しているけど、上手く記録に収納されない人だ。今回もあんまり収納できていない。ただ、存在としては感知できる。服が一緒だったような気もするけど、そこまで観察できないという障壁。面白いよなぁ。
何を話したかという言語は記録されている。なんだか嬉しそうに良かった良かったと連呼してくれるものだから、謝ることがあれば謝らればとか、他にも色々準備していた言葉に意味を感じられなくなって、気が抜けた。たぶんこれが安心なのだろうなと久しく感じられていない感覚を想う。
何がそんなに嬉しいのかは分からない。いやらしく現実的に穿てば、営業が要らない顧客だという解釈。先客にはかなり営業時間がかかっていたようだし。ただ、営業が要らないのであれば営業スマイルも要らないなと思わなくもなくて、どちらにせよよく分からない。
そういえば、聞きたかったんですけどという前置きで営業トークとは関係ないことを言われた。「サクラ咲く」とのつながり。僕の下の名前を正しく読んでくれたのは初めてかもしれない。どうしようもなく嬉しくなってしまう。別に読み方なんてどうでも良くて、歴代の知人には、ゆう君とかはるかとあだ名で呼ばれていて、なんとも思わない。むしろ、気になっていたということを表してくれた文脈がありがたいのかもしれない。
あと、安心には諦めもある。情報量格差。唐突にお疲れ様ですと言われて、貴方、emptyと用法容量を守った言葉の日記読んでいますよねということがまず1つ。別に聞くまでもない。というは、読んでいようがいまいが僕の感情は変わらないから。あと、お金を払うときに、ちょうどで支払ったのだけど、「ちょうど」ですねと嬉しそうに言われたとき、あぁ、おつりがないないって書いたツイートを僕が読んでいて、ちょうどで小銭を用意したことがバレているなと。これも別に聞くまでもなくて、ほんとは重量軽減のために札で支払った方が良いですかと聞くところまで準備していた。でも、まだ1時間くらいあったし、店じまいを加味するよりは、ぎりぎりでおつりがなくなる方が致命的だから、何も言わずちょうどで支払う。
僕が何を発話したかと言うと、常識的なことだけ。というより、売主と買主の場での語彙。だから、相変わらず可愛いと思いますとかは言えない、言わない。仕事上で次のアポは取ったりしたが。演劇観が更新されているから、今年の劇評は去年とも一昨年とも違うだろうな。
というより、語彙情報の格差よね。きっと。ずるいことだ(嬉)。
基本的に美味しいご飯(精神)を採取する時に、作者に会いたいとは思わない。どんなに好きな作家のサイン会があっても、ご飯だけで良い。けど、今日は逢えて良かったなと思わされてしまった。ただ、あの笑顔に営業以上の何かがあるのかどうかは僕には読めない。いや、読めることと読めないことで混乱している節はある。だって営業が要らないのだから、あんなに嬉しそうに笑ってくれる意味が分からない。
だからと言って、これ以上現実的距離間を縮めようとは思わないのだけど。正味、基準を変えれば十分近いだろうし。現実的には会う機会が在る時に会えればそれで良い。
やっぱり手が綺麗だったなぁ。少しだけ当たってしまったし、お金を渡すときに触れないように震えていたのは見られただろうか、いや見られていない。何故ならコンタクトを忘れて視界がぼやけていたから。でも眼鏡をかけた僕はすぐ感知された。何故に。
今日はまだまだあるぜよ。
ボリューミー。
読書感想文。
バカンスというタイトルで、のほほんとした話を想像していたのだけど全然そんなことはなかった。現実と夢と空想の境界線がどこにあるかが曖昧になって、精神病質感が出てくる、ある意味ファンタジーからホラーになる話。いちいちシーンが心象風景で想起できるのは表現力なのだろうな。いや、僕が専門家だからかもしれないけど。
どこまでが現実かという哲学は僕も考えている。
この話で言えば、緊急事態宣言は現実だけど、放送が鳴っているのは非現実チックだし、本当に妹が居ることと、架空の妹はいつからずれているのかよくよく読まないと分からないし、人が人の現実をどこまで現実と認識できているのかという重層性があるような。
そういえば、この発想って、僕の発信とか日記ですかとも聞かなかったな。
僕みたいな、もともとの日記を読み込んでいる読者からすれば階層が1つ増えて、波さんの日記のどこまでが現実で、どこからが虚構なのかが分からなくなるという効果がありそうな。
まぁ、だからと言って何も変わらないけれど。
まだ読み込まないと意味が分からないところがいくつかある。白紙の紙が挟まっているとか避難経路とか。
意味論。
意味が分かるって、受信側が納得できるという面があるのは否めないけど、僕のは別に納得とは関係ないところにある。発信者が付与した意味が知りたい。これは作者とは離れて存在しているから、作者に聞いても分からない。
重ねて言うけれど、今日は良い一日だった。
ほんと、無駄に惹かれないようにしないといけない。
では、皆さんが匿名的な1日を楽しめますように。
おやすみなさい。