なまなましいはなし

 

 

 

いつか割ると思っていたけど、昨日寝る間際にグラスを割ってしまった。片付けの最中足を二か所ほど負傷して、フローリングに血が垂れる。よく性別としての男は女より血に弱いというけど、僕はあんまり血に対して何も思わないな。皮膚って足の裏でも容易く切れるのかぁ、みたいな。すぐに止まるような軽傷だったからかもしれないけど。痛さに鈍くなるというより、痛さは特に生命維持に影響を及ぼさないというとこが学習されたというか。

 

他人の傷の方が痛いかもしれない。えぐそうな傷跡見つけるとひやっとする。ついでにその時どれだけこの人は痛かったのだろうとか、経緯が気になる。フェチなのかな。

 

 

さておき。連休最終日。

 

引き続き引きこもっても良かったのだけど、ふと思いたって恋文で約束をしてしまったものだから出かけることにした。もちろんここでの約束は、会うとか会わないではなく僕がその時間にそこに居るという自己拘束のこと。こう読むと立会人として利用したとも取れるな。もうしないでおこう。

 

そうして、何をしたか。フットワークの軽さというか、不合理を容易く選択するための訓練というかで、自分が持っている本を読むが為に1時間半の電車移動をするというもの。とにかく川が好きなのと、もう1つの理由で鴨川にした。三条駅に向かう道中の為の本は別に買って。これはなかなかえぐかったので、時間が余れば感想文書く。ちなみに行きと川と帰りで読み切った。

 

今日の空はあいにくどんより鈍色で、電車に揺られながら、雨降ったら読めないなと思いつつ、いや、降ったら降ったで面白いなと思っている変態がいた。結果としては気温もまぁまぁ高くて晴れていたら本は読めなかったし、なんだかんだ雨は降らなかったしで、オーライオーライ。なんとも世界は都合が良い。どのルートでも面白かっただろうけど、もっとも理想的だった。

 

そうして、着いてみると同じように夏の終わりの風情を感じたい人がたくさんいた。特にカップルの多さ。あんまり1人でうろうろするようなところではなかったけど北上していると人気も引いてきてちょうどよく読めそうなスペースが見つかる。読んでいたら、読書同盟みたいな感じで4人で横並びになったのは面白かった。ぼっち同盟とも言う。

 

 

自分が所有していてどこでも読み返せる本を、食べ合わせのためにあえてここで読むという純粋で自発的な時間の遣い方。タイトル言っても通販でしか買えないし、他の人にとって美味しいかは知らないからお勧めするとかもできない。そもそも僕は人にこの本を読んだらいいとか思わないし。読書傾向が分かればなんとなく推奨はできるけど、僕が好きな味を共有したいとかではないのだよなぁ。宣伝効果がなくて申し訳ない感。

 

この人の文体、僕に特攻でもあるのだろうか。いつ食べてもちゃんと味がある。作者さんがかわえぇとか律儀だとかよく分からん人格と切り離してもきっと変わらない。2年前くらいに僕がこの人のブログに書いていたことが正しい。「(文体に)一目惚れしました。」

 

どれだけ他の文体読んでも何が違うのかも分からない。人格、というか存在に対する好ましさとは分けた方が良いのかも。僕の時系列の中で唯一誰でも良かった人ではないとか思うけど、それと現実的な関係がどうこうは別問題。どういう意味で好きなのかを僕の中で確定する必要があるのかないのか。

 

まぁ良いとして。

 

帰り道、しばらく歩いて南下しようかと思い至り、川の流れに合わせて駅に向かっていたら、咲き始めの彼岸花を見つけた。地元ではまんじゅしゃげと呼ばれていて書いていたら漢字変換があってびっくり。方言じゃなかったのか、曼殊沙華。この花の鮮やかな赤とシンプルな茎がとても好き。汁は被れるけど。そうして白も好きだなぁと思っていたら、最寄駅に着いた後に歩いていたら、庭に一輪だけ咲いていてほっこりした。品種改良なのかな。

 

また時間を戻してきて、変な路地に迷い込んだ話も書いておこうか。川沿いに南下するのが人に酔って嫌になってきたからルートを変えて街路を南下することにした。小川風だけど水は一切ないし道は狭い、しかし植物は小川沿いにいっぱい生えている。帰宅時間まで押して来ていたし下世話な話尿意も爆発しそうだから、迷子になったのか不安に進んでいたけど、よく見たら、植物にはネームプレートが付けてある。「サクラノナカマ」とか。さらに進んでいくと綺麗な旅館というかホテルがあって、あぁ、この辺に泊っているお客さん(特に外国の方)向けの散歩ルートなのだろうなと。上手い演出だ。ちょっと魑魅魍魎が出そうな感も出ているし。

 

そうして、帰りの車窓の夕焼け。ほんと綺麗だった。青紫の雲とオレンジの炎みたいな光のコントラスト。これ見たら世界の綺麗さにびっくりするだろうなとソーシャルディスタンスで座っていた隣の学生風の男の人をチラ見したら、案の定目を見開いて眺めていた。うんうんそうやんな、同志よってほっこり。世界はこんなに綺麗で良いのかね。

 

とても楽しい1日だった。

 

なんだかんだ、好きな人と、疑似というか仮想というか可能性的デートもできたし。これって普通だったら気持ち悪い評価になるに違いないのだけど、ある程度受け入れて貰っている感じがするのもよく分からない。

 

 

最後に、今日読み終わった本の話。ちょっとグロテスクな描写があるから苦手な人は読まないようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

はい。

 

「罪の名前」という本。帯をちらっと見た時に、虫を食べるというフレーズがあって、タイトルと相乗して、絶対買うだろうなと思っていた。僕は虫は食べないけど文体は食べるし、なんとはなし罪悪感もあるし。内容としては、人にはそれぞれ変わった性癖があってそれは罪になりうるみたいなこと。最新文庫だけど、まぁまぁネタバレさせていく。

 

まず、人当たりが良い成年がサイコパスで人を殺してもなんとも思わないという章。これは刑法で捕捉できる範疇だなぁと思った。こういう分かり易いのはまだマシと全部読んだら思ってくる。

 

次が、弟を愛してしまった兄の章。この愛は性愛も含んでいて、たまたま弟が運転していた車に兄が乗っている時に事故が起こって、兄が介護が必要になったことが発端で、兄が弟の人生を独占するというなかなか重い純愛。結局その気持ちは弟に伝わらないまま兄は冬の砂浜で凍死するのだけど、なかなか読後感が重い。誰も救われない。

 

ちょっと軽いかなと思ったらもっと重いのが3章。虚言癖の女の子。自分が評価されるために平気で嘘をつくし、他人のことなんてなんとも思っていないのが徐々に露呈してくるのだけど、その人の中では現実であるというホラー。最終的にTwitterで有名人と結婚したことが語り手に観測されるのだけど、プロフィールもでたらめで、顔も変えているしで、後はどうなることやらで曖昧に終わる。これの怖いところは、自分を可哀そうないし強そうにするために虚構を現実とする人は現実世界で普通に居るということ。

 

母親もちょっと近い癖はある。聞き手以外は皆悪者だとして、聞き手だけは味方になってくれるよね、みたいな。ぞっとする。

 

最終章は、道徳的とか法律的とかより生理的にまぁまぁえぐい。

 

同級生の男の子の指を口に含んで達する男の子と書けば、なんとなくその癖は分からなくもない。好きな人に自分の指を含んでもらうのも好きな人の指を含むのも盛り上がるという、僕の癖は別として。

 

この癖は、自分の口の中に生物が居る、そして食べうるということだから、意味合いが全然違う。カエルを食べる描写は実際食べていないのに口の中に変な唾液が分泌されるくらい気持ち悪かった。そこが性衝動と直結されるとはなんとも生きづらいだろうなとも。猫のお母さんが子猫を食べることがあるのは自然の摂理だというところもなかなかきつい。

 

ただ、素朴な僕は、ただ無慈悲に虫を殺すよりは自分の体に取り入れる方が自然の摂理ではあるようなとも思わなくもなく。だからと言って自分で食べたりはしないけど、だったら白魚の踊り食いとかも近いところにはあるだろうし、食べること自体が他者の命を取り入れることだから、死んだ動物の肉なら良いのかと考えても良さそうな気もする。

 

結局生理的な問題でしかないような。例えば、最中に甘噛みしてしまうとかも疑似摂食癖かもしれないし。僕の癖はやめれ。

 

そうこう食べて味わってみると、この本は、僕の癖=罪を自覚しろよということまで読めてくる。人の好意までは食べないけど、何か認知がずれていないかって。文体を食べるのは観念的なものだから現実的に観測されていないだけでとてもグロテスクな行為なのではとか。

 

どうなのだろうね。文体の目的は食べられることにあるから問題ないのかもしれないとふと思った。

 

素朴な罪悪感はどうあっても拭えないのだろうな。

 

何の話か分からなくなってきたし明日は早番なのでおしまい。

 

良い夢を。

 

おやすみなさい。